世界中の空港で並ばずに優先レーンを通れるABTC(APECビジネストラベルカード)のメリットと申請方法

空港の入出国審査の長い行列、並ばずに済んだらなぁと思うことありますよね。

実は、ABTCというカードを持っていればアジア太平洋圏のほとんどの空港で優先レーンを通ることができるのです。

アジア圏で仕事をしているのであれば間違いなく持っておくべきABTCのメリット・注意点と取得方法をお伝えします。

ABTCって一体どんなカード?

ABTCカードは、正式名称がAPEC・ビジネス・トラベル・カード(APEC Business Travel Card)といい、APEC加盟国の政府により発行されるカードで、日本では外務省がその発行と管理を行っています。

Wikipediaに詳しく書かれていたので紹介します。

APECビジネストラベルカードは、APEC域内を頻繁に出張するビジネス関係者の移動を円滑にするために、制度参加国・地域の政府が自国・地域のビジネス関係者に発行する特別なカード(日本人ビジネス関係者には日本の外務省が発行)。日本は2003年から導入。APEC Business Travel Card の頭文字よりABTCと略される。

その名前のとおり、APEC域内のビジネストラベル(業務出張)の円滑化を目的としているカードで、域内でビジネスを行う者に発行されます。

カードの有効期限は5年間(又はパスポートの有効期限の短いほう)です。

ABTCカード

昔は海外ビジネスの規模が1億円以上などの条件もあったのですが、現在は緩和され、

海外(APEC加盟国)との取引が1件以上存在する法人に所属している

場合に申請を行うことができます。

(その他の条件もあるので、詳しくは後述します)

受けられる恩恵

ABTCを持っていることで、以下のような特典を受けることができます。

空港で優先レーンを通過可能

ABTCの最も嬉しいポイントが、

加盟国の空港でABTC専用レーンを通ることができる

ということ。

東南アジアの空港ってだいたい大混雑していて、ひどいときだと入出国に1時間近く並ぶことがあるんですよね。

しかし、ABTCがあれば優先レーンを通ることができるので数分で入国することができます。

私が普段活動している東南アジア圏であればほぼ全域がカバーされているので、移動のたびに並ぶ時間が減ると考えたらかなりのメリットです。

バンコクのファーストトラックレーン

この写真はタイのバンコクのFAST TRACK LANEです。

バンコクの入出国審査は1時間以上並ぶこともあるのですが、ABTCがあるので、この人のいない通路を抜けて5分で入国できました。

ビザ免除での渡航

さらにABTCでは、カード裏面に記載された加盟国・地域(エコノミーと呼びます)に対してビザ免除での渡航が可能です。

ABTC裏面

数多くの国にビザ免除での渡航が可能な私達日本人にとってはあまり意識しないポイントですが、中国人やカンボジア人ビジネスマンにとってとても大きなメリットだと思います。

APEC加盟の21エコノミーの内、アメリカとカナダを除いた

「オーストラリア、ブルネイ、チリ、中国、中国香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、タイ及びベトナム」

の国と地域をビザ免除で渡航することが可能となります。

(国と地域名は外務省の呼称に倣いました。)

オーストラリア、パプアニューギニア、ロシアの3カ国は日本人でもビザが必要なので、その地域とビジネスを行っている場合はビザ免除の恩恵をうけることになりますが、

そもそも日本人としてのビザ免除のほうが期間が長い

こともあるので、日本パスポートを持っている私達にとってはビザ免除で渡航が可能という恩恵はあまり大きくはありません。

ABTCの注意点

ABTCは、その名前の通りビジネストラベル以外での利用はNGです。

ABTCはAPEC域内の貿易及び投資の円滑化に寄与することを目的とした制度であるため,ABTCを用いてABTC制度参加国等に入国・入域した場合に許される活動は,短期間行われる収入又は報酬を伴わない活動であって,商談,業務連絡,市場調査,投資のための契約締結,納品後の報酬を伴わないアフターサービス等に限定されています。短期商用以外の渡航目的(観光など)での使用は想定されておらず,また,収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行う場合には,一般に就労ビザが必要となるほか,かかる事態が判明した場合には,当該参加国・地域の国内法令に従い処罰される可能性があるほか,ABTCの失効手続を執らせていただくことになりますので,十分御注意願います。

外務省のウェブサイトに詳しく書かれています。

わかりやすくいえば、

  • 観光
  • 就労

で使ってはいけないということです。

商談、業務連絡、市場調査、アフターサービス等を行う目的で入国する場合

のみ、提示して使用するようにしましょう。

ABTCを取得できる要件

ABTC申請要件は外務省のウェブサイトに以下の通り規定されています。

(1)有効な日本国旅券を所持していること。
(2)申請書その他の提出書類に虚偽の記載がないこと。
(3)犯罪歴がないこと。
(4)外務大臣が告示で定める次のいずれかの要件に該当していること(ただし,職業運動選手,報道特派員,芸能人,音楽家,芸術家又は同様の職業に当たる方には,交付することができませんので御注意ください)。
(ア)APECビジネス諮問委員会(ABAC)の日本委員,日本委員代理又は日本委員を補佐する業務に従事する方
(イ)金額の多寡を問わず,貿易・投資実績(注2)がある企業等の経営者又は当該企業等に雇用されている方で,貿易等に関する事業(注3)を行うことを目的として参加国・地域への渡航が必要であると認められる方
(注2)過去1年間又は直近の決算期(1年分:四半期連結)に行われた,海外の企業等との貿易にかかる取引の実績又は,過去に行われた海外の企業等との合弁,合併,不動産の買収等の投資に関する実績があること(連結会社(連結財務諸表の用語,様式及び作成方法に関する規則(昭和51年大蔵省令第28号)第2条第5号に規定する連結会社をいう。)にあっては,連結会社において過去1年間に行われた貿易に関する売上又は海外投資の実績を有すること)。
(注3)短期間行われる貿易又は投資に関する交渉,業務連絡,市場調査,契約締結若しくは納品後の役務若しくはこれらに関連する事業
(ウ)ABAC日本支援協議会の構成団体(日本経済団体連合会,日本商工会議所(日本商工会議所の会員である商工会議所を含む),経済同友会及び関西経済連合会)の職員,その団体の会員である機関の経営者又は当該機関に雇用されている方で,貿易等に関する事業を行うことを目的として参加国・地域への渡航が必要であると認められる方
(エ)貿易等に関する事業を行う機関の経営者又は当該機関に雇用された方で,貿易等に関する事業のうち特に災害復興に資すると認められるものを行うことを目的として参加国・地域に渡航し,かつ,今後同様に渡航することが必要であると認められる方

太字は私の方で追加しました。

基本的には私達一般人の申請可否を決めるのは、(4)(イ)の条件である

  • 海外との貿易・投資実績のある企業の経営者又は雇用されている
  • 貿易等に関する事業のために渡航が必要である

を満たしているかどうかで決まります。

※当然ですが(1)~(3)に当てはまっていることは必要ですし、(4)の(イ)以外に当てはまっている方も申請可能です。

ちなみに、実際に申請を行ったので間違いないのですが、

過去1年間に1件でも海外との取引があれば申請可能です。

実際の申請とかかった期間・金額

2018年の頭にパスポートを更新したため、ABTCの新規取得を行いました。

金額

ABTCの取得にかかる金額は以下の通りでした。

  • 履歴事項全部証明書 発行代金 ・・・ 600円
  • 収入印紙(実質的な申請料)  ・・・ 13,100円
  • 証明写真2枚 ・・・ 約200円(タイで撮影)
  • 返信用切手 ・・・ 402円
  • 簡易書留での発送料 ・・・ 402円

合計:14,704円

ほとんどが収入印紙代ですね。

印刷はオフィスで行ったので費用がかかってないのですが、A4用紙10枚ほどのプリントも必要です。

実は、これとは別に私のミスで3000円が追加でかかっているので後述します。

申請書類

申請書類は外務省のウェブサイトに書かれている通りですが、実際にどう準備したのかを含めてご紹介します。

これらの書類を封筒にまとめて入れて、外務省ABTC室宛に送れば申請完了です。

(ア)申請様式等

こちらの外務省のページより様式をダウンロードして、記入します。

  • APEC商用渡航カード交付申請書
  • 交付手数料分の収入印紙貼付様式用紙

の2つがあり、どちらも直筆での署名が必要なので注意してください。

私はこれを1つ忘れており、慌てて滞在先のベトナムからEMSで日本に3000円かけて1枚の書類を郵送しました。

(イ)申請者の顔写真2枚

パスポート用のサイズの顔写真を2枚、申請書に貼り付けます。

(ウ)旅券写し

旅券=パスポートです。

顔写真や名前が乗っているページのコピーが1枚あればOK。

(エ)在職証明書

申請者の役職が書かれた在職証明書が経営者であっても必要となります。

自分の会社での申請だったため、代表取締役としての在職証明書を作成し、会社の印鑑を捺印しました。

(オ)所属企業等の登記事項証明書

四季報で存在の確認が可能な上場企業や、日本商工会議所などの会員でない場合は必須です。

私の小さな会社はどの条件にも当てはまりませんので、登記事項証明書を同封しました。

(カ)所属企業等の貿易・投資の実績を示す文書(「決算書」、「損益計算書」の関係部分の写し等)

「過去1年間における貿易又は海外投資を行った実績を有していることを証明する資料」とのことなので、

  • 決算書の売上高のうち、海外売上を明示してマーカーを引いたもの
  • 実際の請求書のコピー
  • 海外送金の入金履歴

を印刷して同封しました。

1件以上あればOKなので、1件分だけ添付しましたが修正依頼もありませんでした。

(キ)所属企業等の業務内容に関する資料

ウェブサイトがある場合はアドレスを申請書にかけば良いので、申請書に記載しました。

(ク)返信用の定形封筒及び郵便切手

長3封筒(長形3号)又は洋0封筒(洋形0号)に402円分の切手を貼って入れておけばOK。

海外に送付する場合はEMS用の封筒に対応する金額を貼れば、海外への送付も対応してくれるそうです。

(ケ)交付手数料分の収入印紙

(ア)で印刷した貼付様式用紙に13,100円分の収入印紙を貼付します。

なお、多い場合も少ない場合も受け付けてもらえないとのことなので要注意。

申請してからの流れと、かかった期間

2018年10月23日に簡易書留で送付しました。

不備がある場合などはメールや電話で修正の依頼が来るそうなのですが、特になにも来ないまま数ヶ月が経過。

外務省で審査をした後は各国に対して審査を依頼しており、すべての国・地域からの許可が降りるまでABTCは発行されません。

特定の国・地域のみの承認でも早く手に入れたい場合は連絡を入れると対応してくれるそうです。

その後、2019年1月28日にABTCカードが日本の会社に届きました。

申請からちょうど3ヶ月ほどでカードが到着したことになります。

半年ほど掛かる可能性もあるそうなので、もし長く待っても来ないようであれば申請状況を問い合わせるのも良いかもしれません。

アジア圏でのビジネスをもっと力を入れていきます!

ABTCを取得して、さらにアジア圏の移動がスムーズになりました。

その他にスターアライアンスゴールド、スカイチームエリートプラス、プライオリティパスもあるので飛行機での移動はかなり快適になっています。

これを期に、ビジネスをもっと拡大させるぞー!!

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