人生に選択肢は多ければ多いほうが良い、そう思っていませんか?
確かに選択肢が全く無いよりはあったほうが幸福度は増すのですが、必ずしも全てがそうだとは言い切れないのです。
私達の思考のバイアスを知り、それを逆に活用できるようになることで人生が豊かに、そして幸せになります。
そのバイアスの内容とテクニックをお伝えします。
サクッと読める目次
選択肢が少ないほうが良いケース
過去、選択肢に関するこんなデータがあります。
どれも意外かもしれないのですが、実験によって裏付けられたものです。
決定回避の法則(ジャムの法則)
コロンビア大学が行ったスーパーマーケットで24種類のジャムを並べた場合と、6種類のジャムを並べた場合の違いについて調べた実験です。
実験結果は以下の通りとなりました。
- 24種類のジャムを並べると60%のお客さんが立ち止まった。6種類の際は40%。
- 6種類のジャムを購入した人は30%。それに対して、24種類のジャムを購入した人は3%。
このことから、選択肢が多いことは興味を喚起することには有効だということがわかります。
まだあなたのお店から買う、と決めていない人には沢山の選択肢を見せるのも良さそうです。
しかし、実際の購入を決める段階においては、選択肢が少ないほうが10倍もの購入率だったそうです。
選択肢が多すぎると、「選択肢の中から最適なものを選ぶ」ということができず、結果的に「今回は買わなくていいや」となってしまうのです。
実は「決断」というものはものすごくエネルギーを使います。
スティーブジョブスが服を選ばなくて良いように毎日同じ服(黒Tシャツにジーンズ)を着て、より重要な決断のために自分の力を集中させたのも有名な話ですね。
そして、そのエネルギーを使う決断を無意識に避けようとしてしまうのです。
お見合い結婚のほうが満足度が高い
また、お見合い結婚と恋愛結婚の満足度を調査した結果も驚きの結果になっています。
結婚後の満足度を1年後と、10年後に91点満点で調査したものです。
1年後の満足度:恋愛結婚は70点、お見合い結婚は58点
という結果になりました。
これはなんとなく予想したとおりですよね。
では、10年後の結果を見てみましょう。
10年後の満足後:恋愛結婚は40点、お見合い結婚は68点
なんと、恋愛結婚の満足度がかなり下がり、満足度が逆転してしまいました。
この要因としては様々なことが考えられるのですが、大きなものとしては、
自ら相手を選択したがゆえに、恋愛結婚の場合は自ら消した選択肢(他の恋人や好きな人など)と比較してしまい、なにかネガティブなことがあるたびに「あの人にしておけばよかった」と思ってしまう
という理由があると思います。
たくさんの候補の中から最善のものを選んだと思っているからこそ、選ばなかった候補と比較してしまうのですね。
しかし、結婚生活は二人で共に作り上げていくものであり、選ぶものではありません。選んでからの二人の努力が最も重要になってきます。
お見合い結婚の場合はもともとお互いが多くの選択肢から選んでないがゆえに、
相手と合わないことが少しあるのは当たり前で、それをどうやってすり合わせていくのかを考える
という思考プロセスになります。
つまり、恋愛結婚の場合は過去を後悔し、お見合い結婚の場合は未来を創り上げていくという思考の違いが出るのです。
これも、選択肢があったからこそ過去を後悔してしまうというケースです。
このように驚くような選択の不思議については、こちらの本にたくさん書かれています。
興味がある方は読んでみてください、面白いですよ。
なぜ「選択肢が少ないほうが満足」につながるのか
そもそも、私達は選択肢が全くない状態を好みません。
自分で物事を選択できているという認識が幸福につながるのです。
それでも、選択肢が多すぎると、幸福感が減ってしまいます。
その理由を考察してみます。
プロスペクト理論の「価値関数」
まず、人は選ばなかった選択肢を全て「失った」と感じてしまうのです。
決断とは何かを失うことなのです。
例えば恋愛をしていたとすると、誰かと付き合ったり結婚したりするということは、他の人と恋愛関係になることを放棄することになります。
どこかの会社に就職したり、なにか仕事を始めたりすることも、他のことをする時間を失うことになります。
そして、プロスペクト理論では
得る喜びに対して、失った悲しみは2倍に感じる
と言われています。そのため、私達は喜びよりも悲しみを感じやすくなっているのです。
ギャンブルで損をする人もこの思考になってしまうことが多く、
例えば100円得してから、100円損すると、なんだか気持ちはマイナスになってしまうのです。
一度得たものには執着が生まれてしまい、その執着を手放すのがとても辛く感じてしまうのです。
選択肢があるという状態も、実際には得ていないのにも関わらず得られた可能性を高く評価してしまい、
なにかネガティブなことが起きると隣も芝が青く見えてしまうのです。
私達の評価はハロー効果とゲイン効果とロス効果強くに影響されている
ハロー効果、ゲイン効果、ロス効果という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
選択肢と幸福度の関係を話す場合はゲイン効果とロス効果の2つでも十分なのですが、これらに強く結びついているのがハロー効果なので、本記事ではハロー効果もあわせて紹介しています。
難しい概念ではないので、聞いたことだなかった人にもわかるように、ここでかんたんに解説します。
ハロー効果
ハロー効果は英語のHello、ではなく英語ではhalo effectと呼ばれるのですが、簡単に言えば
「何か一つの事象をもとに全てを判断してしまう」ということです。
例えば、有名大学卒業の人を面接すると、その学歴に引きずられて本来は学歴とは関係ない項目の評価が高くなったりします。
その他にも、「海外で住んでいた」と聞くと英語がうまいんだろうなぁ、と思ったり、英語がうまいだけで「あ、この人は仕事ができるんだろうなぁ」と思ってしまったりすることも全てハロー効果です。
面接で第一印象が素晴らしいと、その後の評価も何故か高くなるというのもハロー効果の例ですね。
興味深いことに、全く関係ないことにもこのハロー効果は及び、
美人の人を見ると真面目そう、仕事ができそう、正直そう、と思ってしまうということが実験結果で明らかになっています。
また、日本人のビジネスマンに多い傾向なのですが、若手の起業家をみた際に、
実績よりも先に年齢を聞いた場合は「若いのに頑張ってるねー!何かあったら聞いてね!」のように若干上から入ってくるのですが、
実績を聞いた上で、年齢を聞いたら「えっ、そんなに若いんですか!すごいですね!秘訣を教えて下さい!」のように、若干下から入ってくるということもあります。
面接官や役職者など、人を評価することを仕事にする場合はこのハロー効果について学ぶことが多いのですが、かなり学んでも引きずられてしまう人がいるのも事実。
評価される側になる場合は、第一印象をよくする、ポジティブな情報を先に出すことで良いハロー効果を得ることができます。
ゲイン効果とロス効果
ゲインとは得るという意味で、ロスとは失うという意味です。
例えば、こんな話を聞いたことがありませんか?
「昔は不良(ワル)だったけど、更生して今は地真面目に仕事をしている」
そして、「なんていい話なんだ・・・」と感じたりしていませんか?
これが、ゲイン効果です。
不良からスタートして、今は更生したというストーリーでは後から印象が上がり、結果的に「今の状態」をそのまま評価するよりも評価が上がるのです。
こち亀に、以下のようなエピソードがあります。
両津
「まておまえら!ちょっと勘違いしているんじゃないのか?」中川
「え、どうしてです?」両津
「こいつのどこがえらいんだいったい!」中川
「ちゃんとまじめになったでしょう えらいですよ」両津
「えらいやつってのは始めからワルなんかにならねえの! 正直で正しい人間がえらいにきまってるだろ!こいつなんかわがままで勉強もしないでやりたい事やってそれがやっと普通のレベルにもどっただけだぞ」中川
「でも・・・」両津
「おまえなんかおまえの大好きなパンテーラにあのやかましいバイクで正面衝突してフォーカスかざった方がよかったんだ」部長
「こらっ 何て事いうんだ! そういう目でかれをみるからひねくれて・・・」両津
「そういう部長もよくない!!
ごくふつうにもどっただけなのに それをえらい 立派だと甘やかしてるでしょうが! ひねくれるのは自分の勝手なんですから!
こいつから金をとられたまじめな学生やバイクをとられた人の方が悲惨でしょう!? 『正直者がバカをみる』の手本を示している こいつのどこが立派なんすか?
同じ年で新聞配達などしてがんばってる少年の方が立派でしょうが どうしてそんな単純な事がわからないのですか!部長」こちら葛飾区亀有公園前派出所 第42巻
こち亀の両さんは人生を考える上でとてもいいことを言うことが多いのですが、このセリフもとても的を得ています。
不良が更生してまともになったからと言って、もともと悪いことをしていない人と同じになっただけです。
それでも、なぜかその人のことを良い人だと思い、信頼してしまう・・・これがゲイン効果の力です。
逆に、第一印象が良かった場合に、なにかマイナス点があるとその人のことを良く評価できなくなってしまうことをロス効果といいます。
思考のバイアスを知って、役立てよう
今まで説明してきたように、私達の思考にはバイアスがあります。
選択肢が多い場合は選べなくなるので、人に何かを選んでほしいときは選択肢を減らそう
誰かに何かを売る仕事をしているとして、
- この商品も、この商品も、この商品も、この商品も、この商品も、この商品も、全ておすすめです!どれにいたしますか?
- あなたには絶対にこの商品がぴったりです!
のどちらが売れると思いますか?
前者の営業マンからはきっと何も買ってもらえないでしょう。
後者の営業マンからはその人を信頼している人であれば迷わず購入できるでしょう。
上記は極端な例ですが、選択肢を減らしてあげることが重要になります。
自分の思考にバイアスがかかっていないか意識しよう
- 何かを選ぶ際に他の選択肢を失ったと感じる
- 失う悲しみ生えた喜びの2倍
- ハロー効果、ゲイン効果、ロス効果というバイアスがある
これらのバイアスがあることを知り、ネガティブなことがある際にそこまで落ち込まないようにある程度意識するようにしてみてください。
もっというと、「他の選択肢を選んでいればこんなのとにならなかった・・・」と思うほとんどどのケースは残念ながら幻想です。
過去は変えられないので受け入れて、未来は変えられるので未来志向になるようにしてみてください。
これらを知って役立てることで私達の生活は一気に良いものになるはずです。