今回は既得権益について考えてみようと思います。
既得権益っていうとどのようなイメージがありますか?
古く時代に合わないもの、新規参入を阻害するもの、などネガティブなイメージが有るのではないでしょうか。
既得権益がなんだか悪者のように言われていますが、
そもそもただ悪いものだったらわざわざそんなモノ生まれないですよね。
新しい社会に向けて既得権益と戦っている人こそ、そこを知っておいたほうが良い背景というものを説明してみます。
既得権益は良くない!撤廃すべき!
そんな議論を聞いた時に、その先にある未来が待ち遠しいと思いつつも、なんとなく違和感を感じていたのでちょっと調べてみました。
サクッと読める目次
新規参入を阻む規制をタクシー業界で考えてみる
Uberなどのライドシェアが日本に入ってこれない一つの要因としてタクシー業界というものがあります。
日本でライドシェアを行うにあたっては、現在以下の3つの規制があると思います。
・2種免許の存在
・事業用ナンバープレートの存在
・個人タクシーの規定
ひとつひとつ、なぜそのような規則があるのかを考えて見ることにします。
2種免許の存在
Wikipediaによれば2種免許とは
「旅客運送契約遂行として自動車を運転する場合に必要な運転免許証である。1956年8月1日から施行された」そうです。
昭和30年前後の日本においては、タクシーによる交通事故の増加が社会問題化したそうです。
当時の資料にこう書かれています
「繁華街の中を多くのタクシーが客を求めて動き回り、満員の人を乗せた大型バスが町といわず、 村といわず走っている。そしてそれが多くの事故を起こし、そのため、多数の人命が失われ、傷つい ている。「先ず旅客自動車の安全を」ということは大きな世論となっている。」
※https://www.npa.go.jp/koutsuu/menkyo/2shu_menkyo/01/01_giji.pdf
その後、21歳以上かつ免許保有期間3年以上という第二種免許が制定されました。
つまり、この免許制度は一般市民をタクシーやバスの運転手による交通事故から守るために、より高度な運転技量を持たせるために作られたもののようです。
事業用ナンバープレートの存在
「白タク」という言葉がある通り、タクシーのナンバープレートは緑色ですよね。
自家用自動車が白色、事業用自動車が緑色となっているのですが、この事業用自動車というのは昭和22年から区分されているようです。
これも普通車に比べると短い期間での車検が要求されていることから、旅客や貨物を運ぶという性質上、年間の走行距離が長距離になることや故障した場合の損害を考えた結果こうなっていると考えるのが妥当でしょう。
つまり、これも私達の安全を守るための規制です。
個人タクシーの規定
2種免許も取得して、事業用ナンバープレートを取得すれっばタクシーが開業できるのかというと、実はそうではありません。
35歳未満であれば10年間以上のタクシー運転経験がなければ、個人タクシーを開業することはできなくなっています。その他、法律に関する知識、交通違反などの条件が細かく定められています。
タクシー会社に勤務するのであれば会社が管理すべき項目も全て個人として管理を行う必要があるため、普通のタクシー運転手よりも厳しく規制されています。
これも、タクシー運転手、そして事業者の質を一定水準以上に確保することにより利用者の利益を守るために行われていると考えられます。
もしウーバーが日本に来たらどうなる?
これらの規制は全て、タクシー業界外の繁華街を歩く歩行者や利用者を守るために発展してきたということがわかりました。
つまり、タクシー業界のために作られた規制は一つもないのです。
その規制に合わせて、各タクシー業者は事業を今まで行ってきました。
そんな中で、ウーバーを日本でやろう!とすると、それぞれの規制の趣旨に鑑みるとすぐにOKとはならないことがわかると思います。
おさらいすると、
・事故が多いから2種免許を取得させ
・走行距離が多いから事業用車両として管理して
・質を確保するために独立に厳しい要件を課す
というのが今のタクシーの現状です。
この状態で、世界で行われているウーバーなどのライドシェアを導入しようとすると
・普通の免許でOK → 事故が多くならないのか?
・普通の車両でOK → 車検の要件はそのままでいいのか
・誰でもOK → 質が低下しないか?
という議論になるのは当然のことです。
既得権益を考えていくことは必要
これらの規制が今の時代にそぐわないものになっているという可能性は大いにあると思います。
ただ、そういう背景を抜きにして「既得権益があるのはおかしい!」と声を上げていても、何も変わらないということがおわかりいただけたのではないでしょうか。
今の時代にそぐわない規制や制度が既得権益として存在するからといって、過去の経緯や歴史などの背景情報を知らずにただ反対していても動きません。
車の安全性が年々高まり、免許制度も時代に合わせて変わってきています。そういう時代の流れの中でどうやって規制を変えていけばよいのか、そういう議論をしていくことが、それを乗り越える近道かも知れない、今回調べてみてそう思いました。
新しい社会を作るために既得権益に対して戦う方々を応援したいと思う一方で、このような相手側の事情を考えた上で戦うことが重要という、
考えてみれば当たり前の結論を再認識しました。