大企業かベンチャーか、の議論に終止符を打とうじゃないか【結局はあなた次第】

仕事で大学生と会うことが多いのですが「大企業かベンチャーかで迷ってます」と相談されることがよくあります。

あまりによく聞かれるので、大企業とベンチャーをどう比較すればよいのか、まとめました。

大企業とベンチャーを分類し直そう

そもそも就職活動性が「大企業」だ「ベンチャー」だと語っているときは大体イメージで語っています。

就職先として検討する場合の企業規模の分類方法を紹介します。

そもそも大企業の定義とは

まず、中小企業の定義について中小企業庁が定めているものがこちら。ちなみに日本にある企業のうち、99.7%が中小企業で、大企業は0.3%しかありません。

業種分類中小企業基本法の定義
製造業その他資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

ここに当てはまらない会社はすべて大企業、というのが経済産業省による定義です。

意外と小さい会社も「大企業」に分類されているような気がしませんか?

「ベンチャー」と「スタートアップ」と「中小企業」の違い

このあたりの用語もややこしいですよね。日本の統計では「大企業」「中小企業(中規模事業者と小規模事業者にされに分類される」の2つで分類されるため、ベンチャーとかスタートアップとかいう用語は出てきません。

昔はグーグルやフェイスブック、サイバーエージェントはベンチャーと呼ばれていましたが、経済産業省に言わせてみればこれらはすべて「大企業」なのです。統計や他の記事を読むときは、ここに注意してください。

スタートアップ、とはその名の通りまさにスタートしたばかりで急成長していこうという会社のこと。設立してからの年数が浅く、会社の規模も小さいことが多いです。

ベンチャーは、ざっくりと言ってしまえば急成長を志向している会社で、スタートアップよりは大きいイメージでしょうか。

人により定義がバラバラなのですが、就職活動を行う上では上のような理解で良いと思います。

チェックするのは、人数規模と成長度合い

なので、スタートアップがいい、とか、ベンチャーが良い、とか、大企業はどうだ、とかいう議論はそれぞれの言葉でイメージする会社が人によりかなり違うので噛み合わないことが多いのです。

就職活動する上では、人数規模と成長度合いによる分類がおすすめです。どちらも、公表されていることが多いので分類もしやすいはずです。

人数規模による分類

人数規模ではざっくりと以下の4つに分けると良いでしょう。

社員数ヒトケタの会社

社員数が一桁の会社は社長を中心に事業が回っています。逆に言えば、社長がいなくなってしまえば一瞬で潰れるのがこの規模。この規模の会社に入社すると、入社してすぐに即戦力として事業を進めていくことが求められます。教える余裕なんて無いことがほとんどですから、先輩の背中を見ながら自分で学んでいかないといけません。将来会社が大きくなれば経営幹部になっている可能性も高いでしょう。しかし、会社が一向に成長しなかったり、無くなってしまうリスクも大きいです。

社員数が10人~30人の会社

社員数が10人を超えると社長だけではなく、売上を作っていける社員が数人いる状態になっています。この規模の会社でも、社長がいなくなってしまえば存続は危ういですが、ある程度は社員で事業を進めていける様になっています。入社後に仕事を教えてくれる先輩がついたり、ちょっとした研修があることもあるでしょう。社内に、将来の経営幹部候補が3~5人くらいはいるのではないでしょうか。その人達と同じところに入ることができれば、経営幹部になることもできます。

社員数30人~100人の会社

ベンチャー界隈で言われている「30人の壁」というものがあり、それを乗り越えた会社は組織としての力が強くなっています。人が30人も集まれば、価値観もビジョンもかなり多様になってくるのですが、そういった人たちをまとめ上げて同じ方向に向かせるリーダーシップや仕組みが存在しているはずです。業務もある程度部門ごとに分かれて遂行するので、社長と一緒に仕事をする機会は30人以下の会社と比べると少なくなるでしょう。将来の経営幹部は大体決まっていることが多いですが、役員ではなく部長であれば数年で目指せるはずです。その上は、あなたの成果次第です。

社員数が100人を超える会社

社員数が100人を超えると、完全に仕事は分業化が進み、各部門の中で仕事をすることになると思います。もはや、100人を超えれば1000人の会社でも1万人の会社でも日々の働き方は変わりません。なぜかというと、どんな大きい会社でも一つの部門は100人程度で作るからです。

成長度合いによる分類

これはざっくりと以下の2つです。ある程度以上の規模の会社によっては、部門によってぜんぜん違うこともあるので部門単位で見てみることも良いでしょう。

前年度比200%(2倍)を超えて成長を目指す会社(または部門)

スタートアップ、とか、ベンチャー、のイメージはこういう会社です。前年度比120%とかではなく、2倍、3倍の成長を志向します。これは既存事業を改善しながら維持していくということではなく、新しいことをどんどん行っていく必要があります。失敗の許容度が高いのもこの会社の特徴で、ハイリスクハイリターンを全力で取りに行き、それができる社員を求めています。

それ以外の会社(または部門)

基本的に大企業はすべてこちらに入りますし、中小企業と聞いてイメージするのもこちらでしょう。既存の朱駅事業があり、それを伸ばしていこうということで前年度比120%などの目標が建てられます。既に上手く言った方法があり、それを伸ばすという思想なので大きな失敗をしないようにすることも求められます。

 

だいたい自分がどんなところに行きたいのか、見えてきましたか?まだまだ続きます。

大企業とベンチャーの裁量・待遇・教育について

大企業とベンチャーは裁量や待遇、教育が違うと言われていますが、本当なのでしょうか?イメージ論に惑わされないように読んでおいてください。

ベンチャーは裁量がある、ってホント?

これは正直に言います。完全に会社によります。

もっと言えば、社長次第です。小規模で急成長している会社は裁量がありそうというイメージですが、実態は社長のワンマン経営ですべて社長にお伺いを立て、社長の指示通りに働いている、というのも珍しくありません。社長が優秀であればあるほど、その可能性が出てきます。

先ほど上で書いたとおり、成長志向が高い会社のほうが失敗許容度が高いのは事実ですが、その失敗しても良い新しいことを写真が自ら考えるのか、それとも社長が考えて指示をするのかは完全に会社次第です。

もちろん成長志向がそこまで高くない会社では失敗許容度は低くなりますので、裁量権は減るケースが多いです。

あなたが大きな裁量を持って仕事をしたいのであれば、成長志向が高い会社の中で、社長や社員の様子を見て探していくことになります。

大企業のほうが待遇が良いってホント?

平均で考えればその通りです。年収ランキングを見ても大企業ばかりですよね。中小企業の部長の給料が大企業の主任の給料と同じくらいという例もあります。

ただ、給料は「その会社が儲かっているかどうか」というただ一点で決まります。

将来に対して投資をしているかどうか、などの経営方針もありますが、儲かっている会社は給料が高く、儲かっていない会社は給料が低い。これが事実です。

大企業のほうが、しっかりを稼げる仕組みができています。ブランド力もあれば、効率的な仕入れもできています。だから、給料が高いのです。

福利厚生は大企業のほうが多かったりしますが、経営者の立場からすれば給料でも福利厚生でも同じく利益から出すしかないので、給料と福利厚生の合計は利益の量によって決まります。

逆に言えば、小さい会社でもしっかり儲かっている会社は給料が高いですよ。福利厚生を充実させる会社もあれば、給料の額面を増やす会社もあります。これは、思想の違いなのですが、額面を増やさずに福利厚生を充実させる会社は、会社が望ましいと思っているライフスタイルを社員にやってほしいと思っています。会社の近くに住んだら家賃がもらえる、とかもそうですよね。逆に、その分をお金で支給する会社は、そうではないということです。

ただ、社長のワンマン企業で社長だけが給料が高いというケースもたまにあるので、それは要注意してくださいね。

大企業のほうが教育がしっかりしているってホント?

これは一言で答えるのが難しいので、まずは「教育」とはなにかというところから話していきます。

企業が行う教育は、「より良いビジネスパーソン」になるために行われています。

より良いビジネスパーソンの定義は会社によって少々異なりますが、ざっくりと言ってしまえば会社が行っている活動を行う能力が高いということです。営業だったら、より良い資料を作り、より良いトークをして、結果的に売上をたくさん取ってくる。経理だったら、早く正確に処理をする、などです。

で、この教育って、どうしたら良いのでしょう?座学だけで十分だと思いますか?

座学であれば、大企業のほうが充実しているでしょう。でも、「まずはやってみて、良かったことと悪かったことから学んでいく」という経験学習プロセスという観点ではどうでしょうか。または、身近に社長がいてその手法を観察しながら学習していくのはどうでしょうか。

もちろん大企業にも敏腕社員はいますし、ベンチャーでも教育がしっかりしている会社はあります。でも、座学を受ければ自分の能力がどんどん上がるわけではない、ということは大学の講義で十分学んできたことではないでしょうか。経営学部を卒業したら、社長として絶対に成功できる、ワケがないですよね。

座学の研修であれ、経験学習であれ、活かすのは最終的に自分次第。あとはOB訪問などで先輩社員に聞いたりして、どのスタイルが自分にとって最も成長できるか判断してください。

大企業とベンチャーで最も異なる点はこれだ!

いろいろと書いてきましたが、私が最もお伝えしたいのはここです。

大企業とベンチャーが最も違うこと、それは、社員の人生に対する考え方です。

「自分の人生を自分で設計していく」か「誰か(人事部)に委ねるか」ということです。

自分の人生を誰かに委ねるってどういうこと?と思ったあなた、これから解説していきますね。

 

今までの日本では自分の人生は人事部に委ねるのが普通でした。特に大きな会社では、どんな職種につくか、どこの支店に行くのか、どんな研修を受けるのか、すべて人事部が決めていきますよね。

変化が少なく、情報格差が大きかった時代に置いてはこの方法はとても有効でした。人事部は社員よりも会社が求める人材像を知っており、そのために何を経験させればよいのかを知っていました。そして、その求める人材像に慣れば将来活躍することもほぼ確実に予想できました。この時代においては、下手に色々と自分で考えるよりも、より世界が見えている人に委ねるのが良かったのです。

しかし、今は変化が大きく、情報格差も少ない時代です。

変化が大きいということは、皆が思い描いている未来が異なるということ。昔は、ある程度同じような未来予測ができました。しかし、この変化が大きい時代においては、私が考えている30年後の世界と、誰かが考えている30年後の世界は違う可能性が高いのです。

人事部が思い描く30年後の世界、及び、会社で必要とされる人材になるためにどうしたら良いのか。人事部がとても有能だとしても、彼らが考えているのはそうなります。もしそこまで有能でなかったら、過去にこの会社で活躍した人材像になるためにはどうしたら良いのか、を考えて育成しているかもしれません。でも、あなたがその人材像へと成長する10年後に必要とされる人材像として正しいのかは正直疑問です。

その会社が今後どうなっていくのか。その業界が今後どうなっていくのか。この世界が今後どうなっていくのか。こういった情報は、昔は上の役職の方のほうが持っていました。なぜなら、計画したとおりにある程度進んだからです。しかし、今はその格差はなくなりました。

あなたの将来を考えたときに、「どんな世界でどんな人になっていたいのか?そのために、何をしたら良いのか。」という質問に対して、自分で作っていきたいのか、誰かに委ねたいのか。

正直、目指すべき人材像が決まった後の「どんな経験をするといいのか」という部分は人事部のほうが得意ですし、そのために必要な人事異動もやってくれます。理不尽と思える人事異動にも、実はしっかりとした意図があることも多くあり、その点においてはやはり人事のプロに任せるのはありです。

ですので、この人だったら信じてついていける!という人に委ねるのであればあまり問題ないでしょう。私も、同じ未来を見て、より洞察の深い人の意見は常に参考になりますし、追いかけることもよくあります。

しっかりと希望と将来像を聞いてもらった上で、その希望を叶えてくれるような会社であれば素晴らしいです。

しかし、あなたが入ろうとしている会社の人事部は、どうでしょう?

このあたりは、一般的にいわゆるベンチャー企業のほうが優れているような印象がありますが、本当に企業によって様々です。

  • 「20年後にどんな未来をつくる、どんな人材になってほしいのか」
  • 「今まで活躍した社員像と、10年後に活躍する社員像の違いはなにか」

など、説明会などで聞いてみると面白いですよ。

まとめ

  • 大企業か、ベンチャーか、という議論はイメージ論が多いのでしっかりと切り分ける
  • 会社規模と成長度合いで会社を分類しよう
  • 一般的なイメージに振り回されず、実態をちゃんと見よう
  • 自分の人生を誰に委ねるのか、または自分で切り開くのかを考えよう

ということです。

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